先進医療視察記(りんくう総合医療センター)

1998.7.22


松 村 宗 剛
 
  7月22日(水)朝はどんより曇っていたが、昼過ぎから快晴となった。参加者は9名で、午後1時前中紀バスに乗り、箕島駅前を出発した。阪和道から関空道に差し掛かったが予定時刻より早かったため、スカイゲートブリッジを渡り関西国際空港へ向かう。今日は風もなく波も穏やかである。旅客ターミナル,ホテル日航関西エアポート,エアロプラザ,ポートターミナルなど車窓より眺め、10分で一周して再びスカイゲートブリッジを渡り、泉佐野南出口で降りると、目の前にRINKU GENERAL MEDICAL CENTERが見えた。全日空ゲートタワーの近くで、りんくう国際物流センターの隣である。ここ、りんくうタウンはバブル崩壊のためか空き地が見られた。


 
りんくう総合医療センターは大阪市立泉佐野病院に大阪府立泉州救命救急センターと府立感染症センターが併設された。午後2時過ぎバスを降り、1F時間外入口で事務局の唐津さんの出迎えを受け、3F小会議室に案内された。2Fがエントランスホールで4Fまで吹き抜けとなり、ホテル並みのロビーやエスカレーターがあるのには驚いた。院内は自然光を採り入れ明るく、壁面にはレリーフ,彫刻,絵画があった。小会議室は円卓になり、座り心地のよい椅子とマイクが備え付けられていた。ここで岸野病院長より斬新な設計の建物で、最先端の設備(特に画像診断)があり、又地域の中核病院としての役割やりんくうタウンに相応しい情報化病院をめざしているとのお話を伺い、パンフレットを頂いた。
 次に大会議室でビデオを見せてもらった。泉佐野市は人口9.5万人、医療センターは関空の玄関都市のりんくうタウンに平成9年10月発足した。
 この病院の特徴として、

  1.  安らぎとうるおいの空間(待合い,駅から玄関までバリアフリー,夜景の美しい展望レストラン,リハビリ訓練のできる屋上庭園など)
  2.  病院らしくないアメニティー(自然光を採り入れ、三角錐を2つ合わせた変形六角錐で、ナースステーションのオープンカウンター,見晴らしのよいデイルーム,名札のない病室,海側・山側病棟,電動式ベット,個室のシャワーや電話,大型の窓・障子など)
  3.  高度先進医療(手術室,集中治療室,母子センター,血液浄化センター,血管造影検査装置,画像診断,撮影された画像全ての電子保存など)
  4.  救急災害医療(時間外救急診療,救急車で建物の中へ,屋上へリポート)
  5.  地域医療との連携(会議室,研究室,地域医療推進室,オープンシステムなど)
  6.  高度情報化病院(カルテ搬送システム,レントゲン機器類,画像のデジタル保管,コンピューター管理,病院情報システムとネットワーク作りなど)
ビデオの内容はこの様なものであった。
 大会議室を出て、唐津さんの案内でまずエレベーターで9Fに昇り、展望レストランへ。
成る程関空からりんくうタウンにかけて展望がよく、実に明るい。階段で8Fに降りる。ここは病棟で、ルームナンバーだけで名札がないナースステーションはオーブンカウンターで開放感がある。デイルームも明るい。特別室を見せてもらう。トイレ,洗面所,シャワールーム,電動ベット,電話,広い窓があり、部屋代は16,000円という。次にエレベーターで5Fに降り、デイルームから屋上庭園に出る。花壇と遊歩道があり、見はらしがよく、リハビリにも使われている。隣のリハビリテーション室は実に広々としていた。階段で4Fに降りる。地域医療推進室にはコンピューターがあり、診察,検査の予約申込みや紹介状を電話やファクシミリで受け付け、結果を返信しているという。検査の依頼だけでも1ヶ月に220件もある。隣は在宅医療サービスセンターで訪問看護をしている。廊下伝いに救命救急センター4Fにある感染症センターへ渡る。
ベッドごと消毒できる
部長の流田先生から説明を受けた。高度安全病室は重装備で、空気が外へ流れないよう全室陰圧に保たれている。その他の設備,排水処置,着衣からベットまでの消毒,面会人とインターホーンで外側廊下からガラス越しに相手を見ながら話せるなど解説を受けた。再び本館に戻り、3F,2Fの外来診察室,2Fの受付前を通り1Fの救急診察室に降りる。ここからは放射線部長の堀先生に案内して頂く。MR2台、うち1台はオープンMRでカテーテル治療が可能である。ヘリカルCTは2台で、うち1台は血管造影併用CTである。血管造影装置は頭部用と心臓用の2台で、透視装置は4台ある。その上画像をデジタル保管、コンピューター管理しているという。更に病院情報システムとネットワークを作り、日常の診療や症例検討会などに利用できる。しかし、コンピューターの解らない私には説明も十分理解できなかった。
 一応全館の見学を終え、再び3F会議室で岸野病院長と質疑応答が行われた。交通の便もよく、段々と診療圏が拡大しており、当直は5人体制(外・内・小・婦・ICU)で病診連携は月に260件、外来紹介を併せると月400件に達する。それで、医師の労務は増えている。紹介に対し返信しない場合はイエローカードを出しているという。ハードは満足であるが、ソフト面ではまだまだとのことであった。5時過ぎお礼を述べて視察を終了した。2Fエントランスホールから全日空ゲートタワーホテルへ向かう。確かにバリアフリーで段差は全くなかった。
 タワーホテル(256m)の53F翼という名の部屋で勉強会があり、「逆流性食道炎」のビデオを見た。その後、花梨の中国料理を頂いた。なかなか美味しい。紹興酒,ビール,ウイスキーの水割りが入り、政治,経済,日本の将来,産業医,来年の医学会総会や先進医療視察のことなど大いに話が弾んだ。53Fからの日没は美しく、ライトアップされた空港やりんくうタウンの夜景も実に美しかった。
 国立循環器病センター,国立和歌山南病院,天理病院など先進医療視察に参加させて頂いたが、今回も実に素晴らしく感銘を受けた。
 8時にバスに乗り、心地よく寝りながら帰路についた。粂田先生いろいろとご苦労をかけました。
 

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